ゴミ屋敷の話

もう随分長いこと、部屋をほったらかしにしてゴミ屋敷にしていた。

去年の7月に今の彼女と交際をし始めて、たまには家に呼んで一緒にメシ食ったりなどしていたんだけど、

去年の10月頃に以前勤めていた産廃中間処理の会社をトラブルで辞めて、その辺りから部屋を散らかし始めた。その時はシンプルに、精神的に参っていたというのが原因かなと今思う。

程なくして住んでいるアパートのガス会社が変わり、その手続をしなければならなくなったのだけど、

その手続の為に人を呼ぶのも憚るほど既に部屋が散らかっていたので、そうする訳にもいかず、12月頃からはガスもずっと使えない状態だった。

ガスを使わないとなると食事は必然的に電気で調理するものか、もしくは調理する必要のないものを食べる事になる。もしくは外食。

家でそういう食事をするとなると、これまたゴミが増える。

コンビニで冷凍食品なんかは外包装、内包装とあるし、食ったらその場でゴミになるものなので、特にそうだった。

部屋が散らかっていくにつれて、生活に対する意欲が段々なくなっていくのを感じた。

洋室のパソコンデスクの周りがゴミで埋め尽くされると今度は寝室にパソコンを移動して、そこが生活の拠点になった。

友人を呼ぶ気にもデリヘルを呼ぶ気にもならない部屋で、もう色々どうでもいいなと思っている自分に気がついた。

元々、以前付き合っていた彼女といつか一緒に住もうと思って借りた部屋だった。

成人二人が暮らすにも狭くない部屋だし、気に入っていた。多分別れたあたりから、もうどうでもよくなっていたのかもしれない。

酒を買って、飲んで、缶を積み上げる日を繰り返すと、すぐにテーブルの上に堕落を象徴する砦が出来た。

2月頃にいすゞ自動車の契約が切れると、現状をマズいと思う気持ちすら失せていた。正しくは、目を背けていただけかもしれない。

正しい生活のルーティンから目を背けて帰って、ストロングゼロを飲めばすぐに眠って、起きれば仕事だし、外食をすれば多幸感で悪いことは一時的に忘れられる。

そんな日が本当に長いことずっと続いていた。うん、長かったと感じる。

貧しくもなった。単に食費が嵩むから。普通に暮らしてれば一日、1000円もあれば贅沢な食事と酒なんか十分に摂れる筈なんだけど、自炊しないとなると結構な額がかかる。

色んな私物を売り払った。マイクもスピーカーもヘッドフォンも売った。色んなものを投げうって、遊んだし、堕落し尽くした。

5月の半ばに母親から連絡があって「6月にそっちに行く、宿は高いから部屋に泊めてくれ」とのことだった。

「ここまでか・・・」という気持ちと「いい機会だ」という気持ちがあった。

そのぐらい強制力がないと多分部屋を片付けることもしないだろうと思って、それを承諾した。

結局部屋が片付いたのは母が来る日の深夜。6時間ぐらいかけて、全てのゴミを捨てて、床を磨いて綺麗にして、元通りにした。

部屋が綺麗になった日に、ガス屋を呼んでガスの開栓手続きをしてもらった。

全部が元通りになると、こんな造作もないことすら煩わしいと感じていたのだなと思った。

綺麗になった部屋を見て、前の彼女と寝るために買ったセミダブルサイズのベッドを見て、色んな事に関して、間違っていたのは自分だったんだなと思い知った。

今日、賃貸保証会社のお兄さんが来た。私の部屋がゴミ屋敷になっているのも見て知っていて、注意をされていたので、部屋の中を見せたら「あの状態からよくここまで・・・」と言われた。「いい加減、人間に戻りたくて」と言ったら、笑っていた。

普通に生きてりゃいいのだ、この城を守って、また友達を呼んで騒いだりしたいな。と思う。以上。