Tommy(Official) Official blog

ネタツイッタラー、シンガーソングライターとして活動する"Tommy(Official)"のオフィシャルブログです

オランウータンを殺してしまった

オランウータンのタロウ(仮名)は母親思いの5歳児で、身体は大きく頑丈であったが、心は人一倍、いや、猿一倍優しい、若きオランウータンであった。

タロウの母は長く病気で、高い鉄柵の向こう側の施設で療養を続けている。

時折柵の側までタロウにその姿を見せに来るが、タロウの母は既に長くなかった。

タロウの母はその事を勘繰られないよういつも笑顔で居たが、タロウはその事を察して気付かないフリをし、また母に笑顔を向けるのであった。

 「母さん、きっと良くなるよ。僕と父さんはこっちで待っているから、早く出ておいで」

 心優しいタロウはいつも母にそう声をかけていた。

 タロウの父は心優しいタロウを誇りに思っていたし、不幸な出来事があろうと、家族は強い絆で結ばれていた。

 しかしタロウの悲しみには行き場が無かった。たった一人の母を鉄柵越しに励ます日々の不安、そしてその母をも失うかもしれない恐怖は、次第にタロウの心を黒い影に包んでいった。


 トミー(Official)はジャングルの管理事務所に勤める人間の一人である。

オランウータン達の生態調査、密猟者の逮捕などを主に生業としている青年で、タロウ達親子とは浅からぬ関係にあった。

ジャングルにはオランウータンを毛皮や愛玩動物にする為に捕獲しに来る密猟者が後を絶たなかった。 トミー(Official)は密猟者を逮捕もしくは私刑に処し、多くの密猟者はジャングルの土塊と帰したが、一部の逃げ出した密猟者がリークしたデマにより、ジャングルの管理事務所及び野生のオランウータンへの世間の風当たりは冷たかった。


 トミー(Official)はしばしばタロウの肩に手を置いては「お前の母さんはきっと大丈夫だ。きっと良くなる。俺達は決してお前達を見捨てたりしない」と語りかけた。言葉は通じていなかったかもしれないが、想いは通じていた。少なくともトミー(Official)はそう感じていたのだ。

タロウが オランウータンだからそう言ったのではない。タロウが友達だから励ましたのだ。

  しかしその日、タロウの悲しみはついに溢れ出してしまった。母を思う優しい心の、わずかなひび割れから漏れ出た悲しみや怒りは、トミー(Official)に向けられた。

 「母さんを返せ」

 タロウは右手で強くトミー(Official)を薙ぎ払った。体重95kgの成人男性はグラりとよろけながら、岩壁の際に立たされた。

  「タロウ、落ち着け」

  トミー(Official)は絶叫したが、既にタロウの怒りと悲しみは彼の全身を支配していた。言葉は彼の耳には届かない。

 タロウは激しい攻撃を繰り出す。野生動物の身体能力は24歳の人間の膂力を遥かに凌駕した。腹を殴られ、頬を叩かれ、叩きつけられた。激しい攻撃を喰らいながらも、トミー(Official)は心で涙を流していた。

 もうこれ以上は保たない。タロウを殺さなければならない。その決意が脳裏に焼き付き、今度は瞳から涙を零した。

 タロウが両手でトミー(Official)の両肘を掴む。凄まじい握力に骨が軋む音が聞こえた。トミー(Official)がそのまま両腕を大きく上下に振りほどこうとすると、一瞬タロウの手の力が弱まり、今度は両手首を掴む形になった。トミー(Official)はそのまま大きく後ずさると、今度は両腕を右に振り、タロウの体勢を崩した。そしてそのまま、己の踵を軸にして回転する動きをし始めた。ちょうどマリオ64クッパを尻尾を掴んだ時のような、あれに似た動きである。

体重で20kgこの人間に劣るタロウは宙に浮き、身体には凄まじい遠心力が掛かっていた。

 トミー(Official)はその回転の力を利用してタロウを岩壁に強く叩きつけた。タロウは呻くような鳴き声を上げたが、少しして静かになった。

 タロウの亡骸を抱き上げ、涙を零すトミー(Official)の姿を見たものは、誰も居なかった。






という夢を見ました。めっちゃ寝覚め悪かった・・・